2019年12月16日
TPCマーケティングリサーチ株式会社
2018年度の日・米・欧3極における再生医療・細胞医薬品市場は、
日本が175億円、米国が2,423億円、欧州が1,020億円と推計される。
- 2018年度の日・米・欧3極における再生医療・細胞医薬品市場は、日本が175億円、米国が2,423億円(22.03億ドル)、欧州が1,020億円(9.27億ドル)と推計される。
- 地域別に見ると、日本市場は、保険診療の対象品目及び自由診療の枠組みで処方されている治療の2種から形成されている。保険診療の対象品目は、自家培養表皮「ジェイス」、自家培養軟骨「ジャック」、初の条件及び期限付き承認を取得した心筋シート製品「ハートシート」、国内初の他家由来製品である間葉系幹細胞製品「テムセルHS注」、同じく骨髄由来間葉系幹細胞製品「ステミラック注」、2019年3月に条件及び期限付承認を取得した国内初のCAR-T細胞製品「キムリア点滴静注」の6品目(遺伝子治療薬は調査範囲外としている)。このうち、2018年度は採用医療機関の増加が続く「テムセルHS注」の伸びが目立った。また、自由診療の大部分は癌免疫療法と美容目的の治療が占めており、市場を構成する製品・サービスのほぼ全てが患者自身の細胞や組織を使用する自家移植によるものとなっている。なお、癌免疫療法市場は、近年の癌治療選択肢の拡がりに伴い、2018年度は縮小傾向となった。
- 米国市場は、 FDAによる審査・承認を取得して販売される351HCT/Pのほか、FDAへの届出および製品リストの提出のみで販売が許可される361HCT/Pで形成されており、品目数は日本よりはるかに多い。また、大量生産が可能で、低コスト短期間で治療が提供できる他家移植による製品が多数上市されている。このため、その市場規模は日本を大きく上回っている。2018年度は、前年度に市場投入された癌領域のCAR-T細胞製品「Yescarta」及び「Kymriah」の販売が本格化したことで拡大傾向に弾みがつき、市場規模は2,000億円を突破している。
- 欧州市場でも、再生医療・細胞医薬品の大型新製品「Yescarta」「Kymriah」が2018年に上市された。このため、2019年度は市場への浸透が進み、2018年の米国と同様に大幅な拡大推移をみせる見通しとなっている。
2018年度の日本の再生医療・細胞医薬品市場は、前年度比2.9%増の約175億円。
領域別では、免疫・炎症が前年度比33.3%増と大幅に拡大した。
- 2018年度における日本の再生医療・細胞医薬品市場は、前年度比2.9%増の約175億円となった。
- 領域別に見ると、癌免疫細胞療法が全体の5割強を占める88.5億円で最も大きい。次いで、皮膚が同19.4%の34億円、免疫・炎症が同11.4%の20億円で続いている。
- 癌免疫細胞療法は、前年度比13.2%減となった。2018年度に提供された癌免疫細胞療法はすべて自費診療で、1クールあたり130万円~250万円程度の治療費を患者が全額負担することになる。自費診療は、高コストがネックとなり、近年隆盛をみせる免疫チェックポイント阻害剤など他の治療選択肢と競合していることから、市場規模は年々減少傾向にある。
- 皮膚は、前年度比6.3%増となった。内訳は、J-TECが販売し重症熱傷等の治療に用いられる自家培養表皮シート「ジェイス」、および美容整形などに関する再生医療・細胞治療からなる。このうち、「ジェイス」は、待機患者需要が集中していた前年度と比べると、患者数の減少で売上高は減少している。一方、美容目的で使用されている細胞治療薬は自由診療の対象であるにもかかわらず、ニーズの高さから市場を牽引した。
- 免疫・炎症は、前年度比33.3%増と大幅に拡大した。同領域では、急性移植片対宿主病(急性GVHD)の治療薬「テムセルHS注」のみが展開されている。2018年度は、同製品の採用施設件数が増加したことが市場拡大に寄与している。
- このほか、その他に分類される再生医療・細胞治療薬は、全体の11.7%にあたる20.5億円となっている。これには、乳房再建や毛髪再生などの自由診療が含まれている。
2018年度の日本のブランド別販売高では、JCRファーマの急性GVHD治療薬
「テムセルHS注」がシェア11.4%を占める20億円でトップ。
- 2018年度における日本の再生医療・細胞医薬品のブランド別販売高では、JCRファーマの急性GVHD治療薬「テムセルHS注」がシェア11.4%の20億円でトップとなった。次いで、メディネットが販売する癌免疫療法群及びJ-TECの表皮シート「ジェイス」が、それぞれ同5.7%の10億円で続いている。以下、J-TECの自家培養軟骨「ジャック」が同2.3%の約4億円、テラの樹状細胞ワクチン療法が同2.0%の3.5億円、テルモの心筋シート「ハートシート」が同1.1%の約2億円で続く。
- シェアトップとなったJCRファーマの急性GVHD治療薬「テムセルHS注」は、前年度比33.3%の大幅増を達成している。
- メディネットが販売する癌免疫療法群は、売上高は2位だったものの、前年度比41.2%の大幅減となっている。要因としては、受託製造契約先の医療機関で免疫チェックポイント阻害剤の普及が進み、癌免疫分野の患者数が減少したことが挙げられる。
- J-TECの「ジェイス」は、前年度比9.1%減となった。同製品は、日本で再生医療等製品として最初に薬事承認を取得した表皮シートである。先天性巨大色素性母斑の患者は安定的に確保できたものの、前年度ほど待機患者需要が集中しておらず、重症熱傷の患者数も少なかったことで低迷した。2019年度は、7月に表皮水疱症適応が保険収載されたこと、重傷熱傷の適応における使用枚数制限が40枚から50枚に緩和されることから、増加推移へと転じるとみられる。
- J-TECの自家培養軟骨「ジャック」は、親会社の富士フイルムグループによるプロモーション活動や、学会における臨床データのフィードバックにより、新規施設からの受注が増加した。
- このほか、2019年度からは、新製品の「ステミラック注」と「キムリア点滴静注」がブランド別ランキングに加わる。このうち、「ステミラック注」は、ニプロの脊髄損傷治療薬で、2019年5月より受注を開始している。1回約1,500万円と薬価が高額である一方、供給先が札幌医科大学附属病院に限定されていることから、2019年度の売上高は5億円程度とみられる。
- また、「キムリア点滴静注」は日本初のCAR-T細胞製品。B細胞性急性リンパ芽球性白血病及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の適応で、2019年5月から販売を開始している。
<調査対象>
再生医療等製品、特定細胞加工物、及び癌免疫細胞療法
(遺伝子治療薬、研究用のヒト培養組織等の製品、及び輸送サービス等の周辺事業は除外)
<調査対象企業>
ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J-TEC)、テルモ、JCRファーマ、ニプロ、テラ、メディネット、セルシード、ヘリオス、大日本住友製薬、武田薬品工業、第一三共、アステラス製薬、資生堂、京セラ、田辺三菱製薬、Vericel、Dendreon Pharmaceuticals、Organogenesis、Fibrocell Science、Athersys、Pluristem Therapeutics、Mesoblast、Caladrius Biosciences
<調査期間>
2019年9月~12月
<資料名>
「2020年 世界の再生医療・細胞医薬品市場」
―今後、癌・眼・皮膚領域での新規製品が市場を牽引する―
http://www.tpc-osaka.com/fs/bibliotheque/mr410200499
発刊日:2019年12月13日 頒価:97,000円(税抜)
【会社概要】
会社名:TPCマーケティングリサーチ株式会社
所在地:大阪府大阪市西区新町2-4-2 なにわ筋SIAビル
事業内容:マーケティングリサーチおよび調査レポートの出版
コーポレートサイト:http://www.tpc-cop.co.jp/
オンラインショップ「TPCビブリオテック」:http://www.tpc-osaka.com/
ISO27001認証書番号:IS598110
【本件に関するお問い合わせ】
フリーダイヤル:0120-30-6531